スケッチがあり、仕様書があり、感触の良い工場も見つかった。最初のサンプルを裁断する前に、決めておく価値のある問いがあります。このバッグが売れたとき、何が誰のものになるのか。多くのブランドオーナーはNDAを結んでそこで止まります。妥当な第一歩ではありますが、答えているのは論点のひとつだけで、しかも実際に痛い目を見る論点ではありません。
ソフトグッズは、そもそも模倣されやすいカテゴリーです。化粧ポーチにはコードも基板もなく、価値は形、切替、金具、プリントに宿ります。その価値を守るのは、契約・意匠登録・商標という継ぎはぎの仕組みです。以下では各制度の役割と、サンプル作成前に書面化しておくべき点を整理します。
NDAが守るのは情報であって、外観ではない#
秘密保持契約は契約書です。開示された特定の情報を一定期間秘密として扱い、見積りと貴社案件の生産以外の目的には使用しない、と定めます。実務で使えるNDAは、何を秘密情報とするか(仕様書、図案、パターンデータ、原価)を定義し、協力工場が閲覧できるかを明示し、契約終了後の存続期間を設け、準拠法と管轄を定めています。
限界は「秘密」という言葉そのものにあります。店頭に並んだバッグが撮影された時点で、外観は公知です。NDAは財産権も生みません。違反があれば請求できる相手はその工場であって、店頭で買って模倣した第三者ではありません。見た目には意匠権、名称とロゴには商標が必要です。
パターンは誰のものか#
パターンとは、全数の裁断の基準となるグレーディング済みのパーツ形状、縫い代、マーカーデータ一式です。案件のなかで最も持ち出しやすい資産でありながら、最も話題に上らない資産でもあります。貴社のスケッチをもとに工場のパタンナーが引いた場合、その工場が自社の成果物とみなすのは無理からぬことです。
たいていは二文で片が付きます。貴社スタイルのために作られたパターン、グレーディング仕様、データ化した図案は貴社の所有であること。そして元データは求めに応じて、取引終了時も含めて引き渡されること。要求は程よい範囲に。端の始末の好みといった一般的な縫製ノウハウは、工場自身の技術です。
治具・金型・抜き型は別項目で#
別注金具になると物理的な治具が絡みます。オリジナルバックルの射出金型、引き手の刻印版、型押し用のエッチング版、刺繍のデータ、プリント用のスクリーンなどです。いずれもサプライヤーの手元にあり、繰り返し使えます。
一点ごとに三つ質問してください。誰が費用を負担したか。誰が所有するか。どこに保管され、移管できるか。所有権は原則として費用を負担した側に帰属させ、品目・保管場所・所有者を並べた治具リストを作るほうが、包括的な一文よりはるかに役立ちます。加飾方法によって発生する治具の量も異なります。決める前に刺繍と型押しの比較とノベルティ案件のプリント方式の選び方をご覧ください。
独占は素材ではなくスタイルに#
独占の要望は、範囲を広げすぎた時点で通らなくなります。自社のパターン、図案、別注金具、完成したスタイルを他社に提供しないよう求めるのは妥当です。しかし、生地メーカーの定番リサイクルポリエステルや汎用のコイルファスナー、一般的なリップストップの使用をやめてほしいという要望は筋が通りません。それらはサプライチェーン共通の資産であり、その種の約束は断られるか、静かに破られます。
範囲を書き出してください。どのスタイルか、どの市場か、期間はどれだけか。そして印刷ラベル、別注引き手、不良品といったブランド入りの残材をどう扱うか。ブランド入り不良品の処分は買い手の想像以上に重要です。本物のコピーが並行市場に出回る経路がまさにここだからです。素材選定は別の判断になります。化粧ポーチのナイロンとrPET、トラベルオーガナイザーのリップストップナイロンとrPETもご参照ください。
登録意匠と未登録の権利#
意匠権が守るのは外観です。EUの登録意匠は登録から5年、5年ごとに更新して最長25年まで保護されます。一方、未登録EU意匠は公開により自動的に発生し、存続期間は3年、しかも保護されるのは意図的な模倣だけで、独自に生まれた類似デザインには及びません。この点は欧州委員会のYour ヨーロッパでも明記されています。
英国もほぼ同じ二本立てです。登録意匠は5年で25年まで更新でき、守るのは機能ではなく外観です。未登録のデザイン権は立体物の形状と構成を、最初の販売年の年末から10年または創作から15年のいずれか早いほうまで保護し、加えて公開日から3年間の補完的な外観の権利があります。米国で対応する登録は意匠特許で、機能ではなく物品の装飾的特徴、すなわち形状や表面装飾、あるいはその組み合わせを保護します。複数市場をまとめて押さえるなら、WIPOのハーグ制度が一件の国際出願で指定国をカバーします。
要は順番です。未登録の権利は製品を見せた瞬間から進行し、しかも最も弱い部類です。登録する価値のあるスタイルなら、発売用の撮影より前に登録してください。
商標が守るのはロゴであってバッグではない#
商標はまったく別の制度です。USPTOは商標を、商品やサービスの出所を示す語、フレーズ、記号、図形と定義し、権利はその語そのものではなく「当該商品についてのその標章」に生じると説明しています。使用だけでは限定的な権利しか得られず、登録して初めて主張しやすくなります。
化粧ポーチでは、この点が二重に効いてきます。自社のロゴ、織ネーム、下げ札は、バッグ・ケース類を含む区分での登録で守るべきです。図案がライセンス素材であれば、何を作れるか、どの市場で売れるか、どの工場が生産を認められるかはライセンス契約が決めます。
量産前サンプルの前に書面化すべきこと#
ここまでの内容はほぼすべて、NDAと同時に交わす短い開発契約で決められます。最初の一枚を裁断する前に済ませてください。盛り込む項目は、パターン・グレーディング仕様・データ化した図案の所有権、金型・刻印版・スクリーンを一点ずつ記載した治具リスト、対象市場と期間を含む独占の範囲、協力工場にも同じ義務を負わせる条項、ブランド資材・サンプル・不良品の処分方法、そして自社宣伝に貴社製品を使ってよいかどうかです。
そのうえで技術プロセスと結び付けます。量産前サンプルは承認済みデザインが実際どうであったかの記録であり、AQL検品計画は市場に出してはならない不良の線引きを定めます。どの条項よりも効くのはパートナー選びです。OEM/ODMパートナーの選び方もご覧ください。
こうした問いを当たり前に受け止める工場と組む#
ブランド案件に慣れた工場であれば、こうした話題は決して気まずいものではありません。ROOTSMENは1981年からカスタム化粧ポーチ、ポーチ類、トラベルオーガナイザー、ノベルティ製品を手がけ、1993年からは広東省に自社工場を構えています。ディズニーのFAMA、ISO 9001、SMETA、GMP、BSCIといった監査済み認証を維持しているのは、ライセンサーや小売企業が「何を作り、その後どう扱ったか」の記録と管理を求めるからです。
デザイン面の論点と商流の論点は、同じ打ち合わせの場に載せてください。スタイルのご相談はお問い合わせから、実績は化粧ポーチやノベルティ・購入特典のページをご覧ください。
| 制度 | 守る対象 | 取得方法 | 一般的な存続期間 |
|---|---|---|---|
| NDA/開発契約 | 秘密情報、パターンと治具の所有権、独占 | 工場と交わす契約 | 契約による。加えて存続期間 |
| EU登録意匠 | 製品の外観 | EU官庁への出願 | 5年、25年まで更新可 |
| EU未登録意匠 | 外観。ただし意図的な模倣に限る | EU域内での公開により自動的に発生 | 3年、更新なし |
| 英国登録意匠 | 外観。機能は対象外 | 英国官庁への出願 | 5年、25年まで更新可 |
| 英国未登録デザイン権 | 立体物の形状と構成 | 自動的に発生 | 最初の販売年の年末から10年、または創作から15年のいずれか早く満了するほう |
| 米国意匠特許 | 物品の装飾的な外観上の特徴 | USPTOへの出願 | 法令による。出願前に現行の期間をご確認ください |
| 商標 | 出所を示すロゴ・名称・記号 | 使用で発生。登録すれば格段に強い | 使用を続ける限り無期限に更新可 |



