バッグ発注における AQL 検品計画の立て方
多くのバイヤーが逆の順番で書いてしまう検品条項です。まずバッグ・ポーチ類における不良の定義を決め、次に検査水準と AQL を選び、最後に誰がいつ検品するかを決めます。
発注書の検品条項は、たいてい数字から始まります。「AQL 2.5 で検品」— そしてそれで終わりです。縫製品において、この一文が決めていることはごくわずかです。ロットが不合格になるまでにサンプル内に許される不良の数は決まりますが、ファスナー付き化粧ポーチで何を不良とみなすかは何も定めていません。トラブルのほとんどは、まさにそこから始まります。
実務として有効な順番は、その逆です。まず不良の定義を書き、検品員が照合する判定基準を合意し、検査水準と AQL を選び、そのうえで初めて誰がいつ検品を手配するかを決めます。
AQL・ロット・検査水準とは、実際には何を指すのか?
AQL(acceptance quality limit、合格品質限界)とは、その抜取検査計画において、なお許容できるとみなされる工程平均の限界値です。出荷分に認められた不良率ではありませんし、合格したロットにその割合の不良しか含まれないという保証でもありません。米国の NIST/SEMATECH Engineering Statistics Handbook は明確に述べています。抜取検査が判定するのはロットが合格となる見込みであって、ロットの品質そのものではありません。
ロットとは、一つの判定単位として検品に供される数量です。通常は 1 型・1 カラー・1 生産バッチで、梱包を終えた状態を指します。一回抜取検査方式とは、サンプルを一度だけ抜き取り、不良品数が合格判定個数以下であればロットを合格、不合格判定個数に達すれば不合格とする方式です。通常検査水準(I・II・III)は、どれだけの検査量をかけるかを決めます。水準 II が標準、水準 I はサンプルが少なく判別力も低く、水準 III はサンプルが多く判別力も高くなります。
そのうえで不良を等級に分けます。致命不良(critical)は製品を危険にし、あるいは販売そのものを不可能にするもの。重不良(major)は一般の消費者が気づいて返品する可能性が高いもの。軽不良(minor)は基準から外れてはいるものの、返品にはほとんど至らないものです。等級ごとに AQL を設定し、バイヤーと合意のうえ発注書に明記します。
ISO 2859-1 はロットサイズをどのようにサンプル数へ換算するのか?
仕組みは二つの表を引くだけです。ISO 2859-1「計数値検査に対する抜取検査手順」(現行版は BS ISO 2859-1:2026)は、ロットごとの検査のために AQL で分類された一回・二回・多回抜取検査方式を定め、なみ検査・きつい検査・ゆるい検査の切替規則も示しています。その目的は、生産者に工程平均を合意した AQL 以上に保つよう促しつつ、不良ロットを受け入れてしまう消費者危険を抑えることにあります。
一つ目の表では、ロットサイズと検査水準からサンプル文字(サンプルサイズ記号)が決まります。二つ目の表では、そのサンプル文字と AQL からサンプル数と合格判定個数・不合格判定個数が決まります。いずれの表も規格本体に収録されているため、発注書には数字だけでなく規格名と版を明記すべきです。
バッグ企画にとって重要な帰結が二つあります。一つは、サンプル数は発注量ほど急には増えないという点です。3,000 個の生産と 10,000 個の生産は比例して検品されるわけではありません。だからこそ、数字よりも不良の定義のほうが重みを持ちます。もう一つは、抜取検査はあくまで一つのロットに対する一回限りの判定であり、生産中の工程管理の代わりにはならないという点です。NIST のハンドブックもこの区別を明確にしています。当社の工程内チェックポイントについては生産・サプライチェーンのページをご覧ください。
化粧ポーチにおいて何が重不良にあたるのか?
ここが最も時間をかけて書く価値のある部分です。定義のない不良リストに「AQL 2.5」を当てはめても、その日の検品員の解釈がすべてになってしまうからです。実用に耐えるバッグ・ポーチ類の不良リストは七つの領域を押さえ、同じポーチを二人が見ても判断が一致する書き方になっている必要があります。
縫製・ステッチ:目ズレ、縫い開き・縫い切れ、目飛び、仕様を下回る針数密度、端末処理のされていない裁ち端。ファスナーの機能:空の状態で平らに置いたときではなく、中身を入れた状態で全長を往復して開閉できること、また通常使用でスライダーが外れないこと。その裏付けとなる強度特性は ASTM D2061-07(2021) ファスナーの強度試験方法が対象としており、エレメント強度、止め具の保持強度、スライダーロックの保持強度、引き手の抜け強度を含みます。
引き手と金具の仕上げ:めっきのキズ、引き手と他の付属品との色ムラ、バリや鋭利なエッジ。承認基準に対する色:合意した光源のもとで承認済みの色見本と照合し、感覚ではなくグレースケールで判定します。AATCC 自身のグレースケールに関する案内は、基準となる色片が指紋や光への露出の影響を受けるため、年に一度交換すべきだと述べています。寸法:各測定箇所に公差を明記します。通常は ±3〜5%、もしくはミリ単位の絶対値です。
ラベル表示:米国で販売される商品については、米国連邦取引委員会(FTC)による繊維製品・羊毛製品法の表示ガイドが、繊維組成、原産国、製造者または責任販売者の名称の表示を求めており、消費者の手に渡るまで明瞭に読め、確実に取り付けられている必要があります。したがってラベルの誤りや欠落は、見た目の問題ではなく法令適合の不備です。梱包とバーコード:ポリ袋・カートンの表示、カートン入数、そして販売用バーコードのスキャンテスト。
なぜ承認済み PPS を判定基準にすべきなのか?
検品員には、照合する対象が必要です。条項が「バイヤーの要求どおり」となっていれば、検品は意見にすぎません。「承認済みの量産前サンプルおよび署名済み仕様書に対して。いずれも封印し、工場とバイヤーの双方で保管する」と書かれていれば、それは測定になります。
量産前サンプルが存在する理由は、まさにここにあります。量産前に PPS が実際に確認していることで述べたとおり、承認された時点で、それがすべての量産品を測る基準になります。発注書には日付と封印番号で特定して記載し、色は承認済みのラボディップまたは色見本に対して判定する旨を明記してください。PPS の生地は取り扱いや退色の影響を受けている可能性があるためです。
生産中に検品すべきか、出荷前に検品すべきか?
理由は異なりますが、どちらも必要です。生産中検品は、一般に発注数の 2 割程度が完成・梱包された時点で手配されます。針数密度の設定違いや引き手の仕上げ違いといった 全体に波及する不具合を、残りの生産で是正できる早さです。これは時間を買う工程であり、出荷の可否を決める工程ではありません。
出荷前検品が合否判定の工程です。通常は広く使われている梱包完了条件 — 一般には発注数の 8 割以上が生産済み、かつ 100% が梱包済み — を前提としますが、これは暗黙の前提にせず発注書に明記してください。それより早く検品すると、検品員はたまたま仕上がっている分から抜き取ることになり、ロットからの無作為抽出にはなりません。発注が複数の型にまたがる場合は、型ごとに別ロットとするかどうかも明記してください。型が混在したロットは、誰も勝てない議論を生みます。
検品は誰が手配し、報告書には何が記載されていなければならないか?
新規サプライヤーとの初回発注では、バイヤーが第三者検査機関を自ら手配・費用負担し、直接指示するのが基本です。これは不信によるものではなく、その結果を出荷を止める根拠として使えるものにするためです。ROOTSMEN では、企画上必要な場合に AQL 検品を手配でき、検査水準と合格基準は量産前にバイヤーと合意します。バイヤーが検品を手配される場合は、検品場所、梱包の状況、サンプルの提示方法をご発注とあわせて確認します。
報告書が出荷保留の根拠となるためには、少なくとも次の事項が記載されている必要があります。適用した規格とその版、ロットサイズとロットの定義方法、検査水準と不良等級ごとの AQL、サンプル数と合格・不合格判定個数、等級別の実際の不良数と写真、仕様書の測定箇所に対する測定結果、カートンおよびバーコードの確認、そして署名入りの合否判定です。サンプル数と合格判定個数を欠いたまま結論だけを示す報告書は、反論することも、根拠として用いることもできません。
不合格となった場合に何が発動するかも、発注書で合意しておいてください。サプライヤー費用負担での選別と再検品、手直し、あるいは値引き。そして再検品の費用を誰が負担するかです。
計画を立てるために、何をお送りいただければよいか?
型別・カラー別の発注数量、想定されるロットの定義、仕向け市場、承認済み PPS と仕様書の参照番号、お持ちであれば不良等級リスト、そしてご利用予定の検査機関をお送りください。不良リストがない場合はその旨をお知らせください。仕様書をもとに当社で案を作成し、ご確認いただきます。
企画がまだ検討段階であれば、最初のお見積りを正確にするために送っていただきたいものが同じ話の開発側を扱っています。また、これらの確認項目が前提としている構造についてはトラベル用品のラインナップをご覧ください。検品計画がご発注の一部となる場合は、ご要望とあわせてお問い合わせからお送りください。
Sources
Engineering Statistics Handbook 6.2.1 抜取検査とは何か — NIST/SEMATECH
Engineering Statistics Handbook 6.2.2 一回抜取検査方式 — NIST/SEMATECH
BS ISO 2859-1:2026 計数値検査に対する抜取検査手順 — 第 1 部:ロットごとの検査に対する合格品質限界(AQL)指標型抜取検査方式 — BSI Knowledge (British 基準(基準s) Institution)
ASTM D2061-07(2021) ファスナーの強度試験方法(標準試験方法) — ASTM International
Test Methods and Evaluation Procedures(グレースケールに関する案内) — AATCC
Threading Your Way Through the Labeling Requirements Under the Textile and Wool Acts(繊維製品法・羊毛製品法の表示要件ガイダンス) — US Federal Trade Commission
開催概要
ブースより
バイヤーからのご質問
案件の範囲を決める段階で、この話題から実際に出てくる質問。