バッグの見積書はたいてい数字とアルファベットから始まります。210D、600D、1680D。バイヤーはこの数字を品質の代名詞として扱い、話が早いので供給側もそれに乗ります。しかしデニールは生地の一側面を示すにすぎず、同じ 600D のポリエステルでも目付・引裂強度・風合いは大きく異なります。
本稿では、デニールが示すものと示さないもの、GSM および織組織との関係、各番手が適する用途、そして頭の中にある生地どおりに見積もってもらうための仕様の書き方を整理します。
デニールが実際に測っているもの#
デニールは直接式の線密度単位で、糸 9,000 メートルあたりのグラム数を表します。600 デニールの糸は 9,000 メートルで 600 グラムです。9,000 メートルという基準は絹取引に由来し、メートル法のテックス(1,000 メートル基準)と対応するため、1 tex は 9 denier に相当します。線密度の国際的な表示体系は ISO 1144(繊維—線密度の統一表示体系 Tex System)に定められています。
ここから二点が導かれます。第一に、デニールは糸の属性であって生地の属性ではありません。糸の重さは分かっても、1 平方メートルに何本織り込まれたかは分かりません。第二に、測っているのは長さあたりの質量であって強度ではありません。繊維種・フィラメント数・撚り・仕上げが、引張や引裂の結果をデニールとは独立に動かします。
デニールは GSM ではなく、織組織とも別物です#
GSM(1 平方メートルあたりのグラム数)は仕上がり生地の単位面積質量で、ASTM D3776/D3776M などの方法で測定します。手に取ったときの厚み感と、輸送重量への影響を左右する数値です。デニールは GSM に影響しますが、たて・よこ密度、織組織、後から施すコーティングも同様に効きます。
だからこそ、粗めに織った約 200 gsm の 600D と、密に織って PU をバッキングした 350 gsm の 600D が、どちらも正直に「600D」と名乗りながら別物のように振る舞います。バイヤー側の原則はデニールと GSM をセットで提示させ、GSM を決め手にすること。デニールは言えても GSM を出せない相手は、生地ではなく糸を見積もっています。
リップストップ・オックス・ツイル:織組織名が補う情報#
織組織はたて糸とよこ糸の交錯のしかたを指し、糸の太さと同じくらい性能を左右します。オックスは一方向に二本以上の糸を引き揃えるバスケット系の平織で、密でわずかに凹凸のある耐久面が得られ、600D・1200D の表地の定番です。ツイルはラゲージやラップトップバッグに見られる斜めの畝が特徴で、同目付の平織よりドレープが柔らかく、シワからの回復も良好です。
リップストップは織組織というより補強グリッドです。一定間隔で太い糸を織り込み、裂けが次のグリッド線で止まるようにします。軽い 210D リップストップが実使用で平織 300D を上回ることがあるのはこのためで、折りたたむ旅行用品では明記する価値があります。詳しくはリップストップナイロンと rPET のトラベルオーガナイザー比較をご覧ください。
番手ごとの得意分野#
70D〜210D は裏地と軽量表地の領域です。この重さの生地は小さく畳め、鮮やかな色が出やすく、輸送重量をほとんど増やしません。ノベルティや購入特典のプログラムでは特に効いてきます。単体では形を保てないため、構造は芯地・フォーム・成型底で与える必要があります。
300D〜600D は化粧ポーチ、トラベルポーチ、トート、オーガナイザーの主力レンジです。600D なら薄い芯地で箱型を保持でき、プリント・刺繍・熱転写の安定性も高く、日常の扱いに耐えます。900D〜1680D はラゲージ、ツールバッグ、摩耗の激しいパネル向けで、硬さ・カートン嵩・多層縫製の難しさが代償になります。用途以上に厚くしてもコストが上がるだけで、体感価値は増えません。詳しくは化粧ポーチOEMの単価を決める要因をご参照ください。
コーティングと仕上げ、そして伴う責任#
バッグ生地の多くは裏面にコーティングが施されます。PU(ポリウレタン)バッキングが一般的で、軽い浸水を防ぎ、織を安定させ、内側の見え方もきれいです。PVC コーティングは重く光沢が強く安価ですが、規制面の宿題が付いてきます。可塑化材料は 規則 (EU) 2018/2005 のフタル酸エステル規制の対象で、成形品中の可塑化材料における DEHP・DBP・BBP・DIBP を質量比 0.1 % で制限しています。多くのビューティブランドが既定で PVC フリーを指定するのはこのためです。
撥水仕上げは別途の検討が必要です。フッ素系の耐久撥水剤には継続的な規制圧力がかかっています。カリフォルニア州 AB 1817 は 2025 年 1 月 1 日以降、規制対象 PFAS を含む新品の繊維製品の州内上市を禁止しており、EU は REACH の枠組みで PFAS の一括規制を審議中です。仕様に「撥水」と書く場合は、PFAS フリーの撥水仕上げか、コーティングか、その両方かを明示し、資材段階で該当する証明書類を求めてください。
仕様を検証可能にする:意味のある試験項目#
生地仕様が実効性を持つのは、試験機関が実施する試験名を書いたときだけです。バッグの場合、その一覧は短くて済みます。耐摩耗性は通常 ISO 12947-2 のマーチンデール法で、試験片が破壊に至る回数として評価します。表面の撥水性は ISO 4920 のスプレー試験で等級判定し、加圧下の耐水性は ISO 811 の耐水圧で測定します。
製品の実際の壊れ方に合うものを一つか二つ選び—トラベルオーガナイザーなら角の摩耗、トラベルポーチなら水はね—目標値を設定してください。それ以外は仕様書に書くより検品段階で管理するほうが有効です。どの条件をどこに置くかはバッグ発注のAQL検品プランの立て方をご覧ください。
テックパックに書く生地一行の作り方#
見積もれる生地一行は七つの要素で構成されます。繊維と混率、デニール、織組織、GSM と公差、コーティング、仕上げ、色の基準です。書き出せば「表地:リサイクルポリエステル 100 %、600D オックス、320 gsm ±5 %、PU バッキング、PVC フリー、PFAS フリー撥水加工、色は Pantone 19-4052 TCX、承認ラボディップを正とする」となります。
この一行だけで、サンプル段階の食い違いはほとんど消えます。裏面と裏地はそれぞれ別行に書き、機屋が指定か自由かを明記し、合わせるスワッチを名指ししてください。そのうえで承認済みの組成を量産前サンプルの段階で確定します。実務上、変更できる最後のタイミングです。理由は量産前サンプルが確認していることで説明しています。
メーカーと一緒に選ぶ、後から直すのではなく#
生地選定は、最初のサンプルの後に修正するのではなく、その前の対話として進めるのが最適です。日々この構造を扱う作り手なら、どこで 600D が過剰仕様か、どこにリップストップを入れれば返品の手間が減るか、どのコーティングが既に決めた加飾方法と衝突するかを指摘できます。
ROOTSMEN は 1981 年より化粧ポーチ、ポーチ、トラベルオーガナイザー、ノベルティ向けソフトグッズを受託製造し、1993 年からは広東省に自社工場を構え、FAMA(ディズニー)、ISO 9001、SMETA、GMP、BSCI に対応しています。参考にしたいバッグでも、目指す見え方でも、まだ大まかな構想だけでも構いません。スワッチと使用シーンをお送りいただき、生地仕様を固める前に当社チームにご相談ください。
| デニール | 代表的な織組織 | 性格 | 適した用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 70D〜210D | 平織・リップストップ・タフタ | 軽く、畳みやすく、ドレープが出る | 裏地、保存袋、折りたためるポーチ、ノベルティの中袋 | 芯地なしでは形が出ない/縫い縮みが目立つ |
| 300D〜420D | オックス・リップストップ | 軽い構造感、柔らかい風合い | フラットポーチ、化粧ポーチの裏地、軽量オーガナイザー | 底に支えがないと角が摩耗しやすい |
| 600D | オックス・ツイル | 箱型を保持し、プリント適性が高い | 化粧ポーチ、トラベルポーチ、トート、トラベルオーガナイザー | 同じデニールでも GSM の幅が大きい—要確認 |
| 900D〜1200D | オックス | しっかりして擦れに強く、明らかに重い | ボストンバッグ、工具・機材バッグ、底パネル | 縫い目が硬い/カートンが嵩み輸送費も上がる |
| 1680D | バリスティック系オックス | 非常に硬く、耐摩耗性が高い | スーツケースの表地、キャリーケース、高摩耗パネル | 多層は縫いにくい/色展開が限られる |



