
化粧ポーチ・トラベルポーチのファスナーの選び方
コイル・樹脂・金属、サイズ #3/#5/#8、スライダーと引手、撥水テープ。量産が承認サンプルどおりに仕上がる仕様の書き方まで。
化粧ポーチやトラベルポーチには、#5 コイルファスナーにノンロックスライダーの組み合わせが基本です。コーナーをなめらかに回り、開閉音も静かで、カスタム引手との相性も良好です。大型のトイレタリーケースは #8、薄型カードケースは #3、重量とコストを許容できる高級感重視のモデルには金属をお選びください。
化粧ポーチで動く部品はひとつだけです。生地も裏地もプリントもネームも、動かずに美しくあればよい。ファスナーはお客様が毎日触れる部品であり、「つくりの良いポーチ」と記憶されるか、「ホテルの洗面所で引っかかったポーチ」と記憶されるかを決めます。
同時に、仕様が最も曖昧に書かれがちな部品でもあります。仕様書にはナイロンファスナー・黒の一行だけ、ということも少なくありません。務歯(むし)の種類、サイズ、スライダー、引手、テープ加工、ブランドは、それぞれ独立した六つの決定です。指示がなければ工場が六つとも決めます。合理的に、しかし承認サンプルとは違う形で。
コイル・樹脂・金属:務歯で何が変わるか
YKK は自社のファスナー種類ガイドで、主要な務歯をコイル、樹脂(モールド)、金属の三種に分類しています。
コイルはポリエステルまたはナイロンのモノフィラメントを連続螺旋状にしてテープに縫い付けたものです。柔軟で軽く、カーブに追従し、軽微な噛み合わせ不良からも復元します。歯が欠けて戻らない金属とは異なります。化粧ポーチの主力であり、明確な理由がなければこれが正解です。
樹脂(モールド)は YKK の商品名で VISLON®。ポリアセタール樹脂を射出成形した独立務歯で、同サイズの金属より軽量と YKK は位置づけています。歯の形が際立ち発色も良いため、ビューティーというよりテクニカルな印象になります。難点は硬さで、小半径のコーナーは苦手です。
金属は真鍮・ニッケル・アルミ・マンガンなどの独立務歯をテープにかしめたものです。樹脂では出せない高級感がある一方、重く、コストも高く、肌に触れる用途では EU のニッケル規制が関わります。
サイズ:#3・#5・#8 は互換ではありません
番手は務歯を閉じた状態の公称幅(mm)で、三種共通です。コイルは #3、#4.5、#5、#8、#10 が一般的。VISLON® は YKK の製品情報によると 3VS、4VS、5VS、8VS 以上です。
#3 は薄く負荷の小さいもの向けです。カードケース、封筒型のフラットケース、内ポケットなど。最も誤用されやすいサイズでもあり、詰め込んだトイレタリーケースに #3 を使うのは、小さな務歯に大きな外向きの力を受け止めさせることになります。#5 は標準的な化粧ポーチの基本で、満杯でも耐え、スライダーや装飾引手の選択肢も最も豊富です。#8 は大型トイレタリーケースや吊り下げ式オーガナイザー向けで、意図的なデザインとして読み取られます。
シリーズ内でサイズを安易に混在させないでください。同じ棚で小サイズが #3、中サイズが #5 では、コストダウンに見えます。
スライダーとロック方式:見落とされがちな仕様
使用中のクレームの多くは務歯ではなくスライダーに起因します。まず YKK のピンロックとオートロックの違いの解説をご確認ください。オートロックは引手から手を離した瞬間にロックし、ジャケット前立てなどに適します。ノンロックはスムーズに動き、YKK はハンドバッグ・バックパック・ラゲージに対応づけています。一日に何度も開閉するポーチには、通常こちらが適します。
スライダーの仕上げは務歯の色とは別に指定してください。同じ黒コイルでも、ガンメタのスライダーとニッケルのスライダーは別物ですが、どちらも見積もりでは「黒ファスナー」と呼ばれます。スライダー二個を対向させれば両開きになり、フラットなポーチをカウンターに開いたまま置けます。実用上の明確な向上であり、サンプル前に決めるべき仕様変更です。
引手:ブランドが実際に現れる場所
引手は、平凡なポーチをデザインされたものに見せる最も安価な方法です。ロゴ入りのダイキャストやプレス金属、射出成形、革または PU のタブ、織ネームやリボン、金属先金付きのコードループなど。
制約は三つ。重量——#3 の務歯に重い金属引手を付けると、スライダーの引手取付部に負担がかかります。色——めっきや塗装の引手は Pantone 基準で合わせるのであってテープに合わせるわけではないため、両者を一枚の実物カードでまとめてご承認ください。金型——異形の金属引手は金型が必要で、その期間はサンプル日程の中に含まれます。同じロゴを本体パネルに入れる場合は、ソフトグッズの刺繍と型押しの比較をご覧ください。
撥水テープと、それが約束していないこと
化粧ポーチは洗面まわりで使われるため、防水ファスナーの相談は絶えません。YKK の AquaGuard® は務歯の裏面にポリウレタンフィルムをラミネートしたもので、コイルと VISLON® の両仕様、フィルムは光沢・マット・カラーの三種があります。
パッケージに表記する前に、YKK 自身の表現をご確認ください。同社はお取り扱いガイドの中で AquaGuard® を撥水であり防水・止水ではないと説明し、「防水」は AQUASEAL® 構造に限定しています。同じページでは、アイロンがけによりフィルムが潰れたり溶けたりする可能性にも触れています。防水を謳うなら生地・縫製・構造も裏づけが必要であり、これはハングタグに印刷する前の素材表示の検証で示した検証の考え方と同じです。
ブランド品と汎用品、そしてリサイクル選択肢
ブランド務歯で買えるのは、ロット間の安定性、公開された技術データ、そしてコンプライアンス資料に名前を書ける部品です。良質な無印の務歯も十分機能します。違いは、カタログではなく試験で確認するという点だけです。ASTM D2061 はファスナー強度試験の標準で、務歯強度、スライダー引抜き、上下止の保持力を含みます。仕様に明記すれば、主観的な議論が数値になります。
リサイクルを訴求するポーチなら、ファスナーだけ例外にはできません。YKK の NATULON® マテリアルリサイクル シリーズは PET ボトルなどの再生材料からテープをつくっており、rPET の本体生地と組み合わせれば筋が通ります。金属について一点:肌に直接かつ長時間触れる製品のニッケル溶出は EU の REACH 附属書 XVII で規制され、EN 1811 で試験されます。出荷前ではなく、早い段階でご相談ください。
ファスナーはどこで壊れるか、そして何を書き残すか
不具合には型があります。スライダーが開いて噛まなくなるのは、たいてい実際の収納量に対してサイズが小さいためです。重いカスタム引手で取付部が外れる。コーナーでテープが縫製から裂けるのは、ファスナーではなくカンヌキ(閂止め)の問題です。コイルであるべき半径に樹脂務歯を通せば変形します。めっきの摩耗は仕上げ仕様の問題です。
その多くは紙の上で防げます。使える一行の仕様には、務歯の種類とグレード、サイズ、テープの色番、スライダー型番とロック方式、スライダー仕上げ、引手の材質と意匠、スライダー数と開き方向、テープ加工、止具とカンヌキの処理、そして量産の合否基準を書きます。量産前に一度、現物で確認してください。量産前サンプルで実際に確認できること、および検品時にファスナー不良がどう分類されるかについてはバッグ発注の AQL 検品計画の立て方をご参照ください。
決定は早い段階で
ファスナーの選定は、設計段階なら二十分。出荷前に持ち越すと大きな代償になります。最初のサンプル前に務歯・サイズ・スライダー・引手を決め、生地スワッチと一緒に実物のファスナーカードを承認し、合否基準は発注書に明記してください。
ROOTSMEN は 1981 年より化粧ポーチ、ポーチ、トラベルオーガナイザーの受託製造を行い、1993 年からは広東省に自社工場を構えています。部品仕様は後付けではなく開発工程の一部として扱います。認証は FAMA(ディズニー)、ISO 9001、SMETA、GMP、BSCI。進行中のデザインがございましたら、ご連絡くださいファスナー仕様を確定させましょう。
| 務歯の種類 | 構造 | 一般的なサイズ | 適した用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| コイル | ポリエステルまたはナイロンの連続螺旋をテープに縫い付け | #3、#4.5、#5、#8、#10 | 標準的な化粧ポーチ、ポーチ、曲線的な開口、ノベルティ案件 | 詰め込まれるポーチに #3 はサイズ不足 |
| 樹脂務歯(VISLON®) | ポリアセタール樹脂の射出成形務歯をテープに固定 | 3VS、4VS、5VS、8VS 以上 | テクニカル/アウトドア調のケース、色を効かせた太い務歯 | 務歯が硬く、小半径のコーナーが苦手 |
| 金属 | 真鍮・ニッケル・アルミ・マンガンの独立務歯をテープにかしめ | 一般に #3、#5、#8 | 高級感重視や革調のポーチ、店頭の主力商品 | 重量、コスト、肌接触に関する EU のニッケル溶出規制 |
| 撥水(AquaGuard®) | コイルまたは VISLON® の裏面にポリウレタンフィルムをラミネート | コイル版と VISLON® 版 | 水まわりで使うポーチ、フィルム貼りの端正な外観 | 撥水であり防水ではない。熱とアイロンでフィルムが傷む |
| リサイクル(NATULON®) | PET ボトルなどの再生材料からつくられたテープ | 仕様により異なる | 本体が rPET で再生材含有を訴求する製品 | 表示の裏づけを製品全体と揃える必要あり |
開催概要
ブースより
よくあるご質問
案件の検討段階で、実際によく寄せられる質問。
標準的な化粧ポーチには #5 をお使いください。満杯でも無理がなく、18〜25cm のポーチに対して比率も自然で、スライダーやカスタム引手の選択肢も最も豊富です。#3 は薄いフラットケースのみ、#8 は大型トイレタリーケース向けです。
多くのトラベルポーチにはコイルが適しています。連続螺旋がカーブしたコーナーでたわみ、軽微な噛み合わせ不良からも復元するのに対し、樹脂務歯は硬いためです。太い色付き務歯をデザイン要素として見せたい場合は樹脂を選び、型紙のコーナー半径を大きく取ってください。
試験を行うのであれば汎用ファスナーでも問題ありません。ブランド務歯は公開仕様とロット安定性を備え、コンプライアンス資料に記載できます。無印を採用する場合は性能で指定してください。ASTM D2061 の強度試験を引用し、承認サンプルカードを量産の合否基準としてください。
いいえ。YKK は AquaGuard® を撥水であり防水・止水ではないと説明し、「防水」は AQUASEAL® 構造に限定しています。フィルム貼りのテープは水はねを防ぎ浸入を遅らせますが、防水を謳うなら縫製・生地・構造も同じ主張を支える必要があります。
多くは仕様に務歯しか書かれていなかったためです。スライダーの型番、ロック方式、仕上げ、引手はそれぞれ独立した項目で、未指定なら在庫品で代替されます。実物のファスナーカードを承認して発注書に添付し、量産前サンプルで再度ご確認ください。
多くの場合は可能ですが、方法が異なります。織タブ、プリントリボン、既製引手へのレーザー加工は金型不要です。異形のダイキャスト金属引手は金型が必要で、開発期間が延びます。引手は設計段階でご相談ください。ROOTSMEN はサンプル後ではなく開発段階で対応します。